上野樹里「良いコンビ」初共演の林遣都に安心感、映画「隣人X」

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

上野樹里さんと林遣都さんが出演する映画「隣人X ‐疑惑の彼女‐」が、12月1日に公開されます。2020年に小説現代長編新人賞を受賞したパリュスあや子さんの小説「隣人X」を、「おもいで写眞」「ユリゴコロ」の熊澤尚人監督が実写化しました。初共演を果たした2人が、本作への思いなどを語りました。

JO1川西拓実&桜田ひより「バジーノイズ」撮影で心の壁を叩き割る

樹里さんは「責任感の強い方」

本作は、故郷の惑星の紛争によって地球に助けを求めた「惑星難民X」が、人間に姿を変え、日常に紛れ込んだことで起こるミステリーロマンス。Xは誰なのか、彼らの目的は何なのか――。

言葉にならない不安や恐怖を抱く人々が、Xを見つけ出そうと躍起になる中、週刊誌記者の笹憲太郎は、Xであるとの疑惑のかかった柏木良子の追跡を始めます。良子を上野さん、次第に良子にひかれていく笹を林さんが演じます。

初共演した上野樹里さん(右)と林遣都さん(秋元和夫撮影)
初共演した上野樹里さん(右)と林遣都さん(秋元和夫撮影)

――お二人とも久しぶりの熊澤監督作品への参加ですね。

上野樹里 (以下、上野):私は2006年に公開された「虹の女神Rainbow Song」以来なので、参加できてうれしかったです。前回は別の方の脚本だったのですが、今回は熊澤監督が書かれるということで、とても楽しみにしていました。

林遣都 (以下、林):2008年の「ダイブ!!」以来です。熊澤監督、白髪が増えたな(笑)。ただ、愛のある厳しさと、愛情深さは変わっていなかったと撮影中に思いました。昔と変わらず、しっかり向き合ってお芝居を見ていただきました。

――お互いの印象を教えてください。

:樹里さんと初めてお会いしたのは、本読みとリハーサルの時でした。そのあと熊澤監督やプロデューサーさんと食事会が予定されていたんですけど、時間が全然足りなくて、夜までリハーサルを続けました。

お芝居に対してもっともっと突き詰めていかなければいけない時に、樹里さんが「優先順位は食事会じゃないでしょ」という姿勢を示してくださって。僕もどちらかというとそういうタイプなのですが、それを体現している方に出会えて、すごく責任感の強い人だなという印象を持ちました。だからこそ食らいついていかないといけないと思いましたし、ますますその後の撮影が楽しみになりました。

上野 :遣都君には、何もないリハーサル室で、機敏に表現できる能力に驚かされました。舞台経験もあるので、何もない所でもお芝居だけでシーンが見えるという安心感がありました。

良子には特に大きな動きがあるわけでもないし、ダイナミックなスケールの映画でもありません。そんな中で、笹は常にハラハラドキドキしていて、色んな感情がうずまいています。遣都君が演じると、それがより力強く刻まれて、良子とのバランスが明確になるから、すごく良いコンビになると思いました。

(c)2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会(c)パリュスあや子/講談社 
(c)2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会(c)パリュスあや子/講談社 

――登場するのはダブルワークをする良子、要介護の祖母を施設に預ける笹、良子の同僚である外国人労働者レンなど、現代の社会問題が浮き彫りになっています。どういうことを感じながら、演じたり作品を見たりしましたか?

上野 :良子は有名国立大を卒業して、大手企業に勤めていたのに、コンビニと宝くじ売り場のアルバイトを10年続けている女性です。友人も、台湾人の同僚のレンちゃんくらいしかいないんですけど、一人の時間を大事にしていて、地に足をつけるということを最優先に生きている。

流されやすい世の中で、すごく頑張っている人なのかもしれないと思いました。大企業に属する道を選ばず、アルバイトを掛け持ちする道を選んだというのも、ある種の強さかもしれない。そこを理解して演じられたらいいなと思いました。

:完成した作品を見たときに、日本語をうまく習得出来ず、周囲から冷たく当たられてしまうレンの姿に、「こんなこと、絶対あってはいけない」と思いました。

東京にいると、コンビニなどで外国出身の方に会うことは多くて、わりと身近な存在です。みんなそれぞれ事情があって一生懸命働いていて、それなのに、思いやりのかけらもない言葉を浴びせられる瞬間がある。浴びせられた側は想像もできないくらいのダメージを受けていて、「この世の中に居場所がなくなる」というくらい、苦しむ原因になり得ることを改めて考えました。

最近、都内では車のクラクションが多くなったと感じます。誰でもミスはあると思うけれど、クラクションがそもそも注意喚起というよりも、「ドケ!」と感情的に鳴らしているように聞こえてしまうんです。ちょっとしたことが人を動揺させ、心を乱してしまうということは、身近なところでも起こり得るんですよね。

相手は自分の「鏡」

――「よそもの」に対する警戒心や、無意識に遠ざけようとする気持ちが物語の中で描き出されています。もしXを受け入れた社会に暮らすことになったとしたら、どんなふうに思ったり、反応したりすると思いますか?

上野樹里さんヘアメイク:清家いずみ/スタイリスト:古田千晶 林遣都さんヘアメイク:竹井温(&’s management)/スタイリスト:菊池陽之介
上野樹里さんヘアメイク:清家いずみ/スタイリスト:古田千晶 林遣都さんヘアメイク:竹井温(&’s management)/スタイリスト:菊池陽之介

上野 :私たちは情報を得て生きているから、知らないものは怖いと感じるでしょうね。私は、Xのことを偏見を映し出す「鏡」だと思っています。

人を見る時って、自分がどういうフィルターをかけているかで、その人の印象が変わってしまうから。機嫌が悪い時は、「あの人は私のこと嫌いなんだ」と思うかもしれないし、自分に自信があれば、「あの人焼きもちやいてる」などと思うかもしれないですよね。

Xがいたとして、100人の人が見たら100通り、感じ方は違うはずだけど、記者が「Xはこうです」って言うと、恐怖心をあおられて、みんな同じように捉えてしまう。そういう恐怖心を克服した2人の関係が絶妙に発展し、変化していく姿も映画を見て楽しんでほしいです。

:「自分自身をしっかりと持つ」ということを心がけます。今回は冒頭に「コロナ」というワードが出てきて、ここ数年を振り返るように話が始まります。コロナ禍でも、どのように対処すればいいのか、何を信じればいいのかと手探り状態の中で、確証のない情報には振り回されたくないと思いました。

情報が入りすぎてしまうので、SNSも最近は以前より見なくなりました。みんな楽しんで使っているし、決して否定しているわけではないですが、俳優の仕事はいろいろ経験することが大事だと思っているので、自分の中でSNSを見る優先順位が低いんですよね。時代に置いていかれてしまっているのかもしれませんが、大多数の人が言っていることよりも、自分が好きなことや幸せだと感じることを大事にしていきたいです。

――笹が良子に昔行ってみて良かった場所を尋ね、もう1度、そこに2人で行こうと提案する場面が出てきますが、お二人だったら何と答えますか?

上野 :父と母、私の3人でお出かけした所が思い出の場所です。小学生の夏休みに描いたポスターが入賞して、プラネタリウムのチケットをもらったので、3人で行ったんです。それと、父と母が2人でカニを食べに行こうとした時にちょうど私が家に帰ってきて、一緒に連れて行ってくれたこともありました。

3、4歳くらいの小さな時、姉たちが帰宅する前に、子供番組を見ながら母の夕飯の料理の香りを感じることや、庭の月桂樹を数枚摘んでミートソースに混ぜるのを手伝うのが楽しかったことを思い出しました。

:10代の頃から仕事を始めて、2回目の海外がニューヨークだったんです。ミュージシャンの佐野元春さんと堤幸彦監督がコラボした「コヨーテ、海へ」というドラマの撮影で、ウッドストック音楽祭跡地など貴重な場所にも足を運びました。

海外で撮影できるなんて今思うとぜいたくですけど、その時は何のありがたみも分かってなくて。それ以来、ニューヨークに行ってないので、もう1度行ってみたいです。

――林さんは、この映画には「多くを求めず、身近に存在する小さな幸せに気づけた瞬間の喜び」などが描かれているとコメントしていました。「小さな幸せ」とは、何を思い浮かべますか?

上野 :夫(ロックバンド「トライセラトップス」の和田唱さん)がワインを飲むならオーガニックワインと決めているのですが、すごくおいしいのに当たったり、たまたま思い付きで作った料理に合ったりした時はちょっと幸せです。朝起きて、晴れている日も「洗濯日和だな」と思って、うれしくなります。

:最近は食べることが一番幸せです。スーパーにも行くようになりました。ジャンクなものも好きなんですけど、シンプルに納豆とたくあんをご飯と一緒にのりで巻いて食べたときに、感動を覚えます。日本食は世の中で一番おいしいと思っています。

(読売新聞メディア局 バッティー・アイシャ)

隣人X ‐疑惑の彼女‐ 』12月1日(金)全国公開
◇出演:上野樹里 林遣都 ファン・ペイチャ 野村周平 川瀬陽太 嶋田久作 原日出子 バカリズム 酒向芳
◇監督・脚本・編集:熊澤尚人
◇原作:パリュスあや子「隣人X」(講談社文庫)◇音楽:成田旬
◇主題歌:chilldspot「キラーワード」(PONY CANYON / RECA Records)
◇配給:ハピネットファントム・スタジオ

プロフィル
上野樹里(うえの・じゅり)
1986年、兵庫県生まれ。2003年『ジョゼと虎と魚たち』で映画デビュー。初主演作『スウィングガールズ』で第28回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。2023年10月には、ミュージカル『のだめカンタービレ』で、テレビドラマと劇場版でも演じた“のだめ”こと野田恵役を務めた。

プロフィル
林遣都(はやし・けんと)
1990年、滋賀県生まれ。2007年、映画『バッテリー』で俳優デビューし、第31回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。近年の主な出演作に、ドラマ『初恋の悪魔』『VIVANT』、映画『恋する寄生虫』など。2024年1月放送ドラマ『おっさんずラブ‐リターンズ‐』、2月9日公開の映画『身代わり忠臣蔵』にも出演。

スクラップは会員限定です

使い方
「大手小町」の最新記事一覧
記事に関する報告
4785905 0 大手小町 2023/11/30 06:00:00 2023/11/30 10:27:12 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/11/20231130-OYT8I50002-T.jpg?type=thumbnail

主要ニュース

セレクション

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)